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ユウコの場合 [ミニ小説]

ユウコが髪をばっさり切ったのには理由があった。
いや、それよりなぜ髪をのばしていたのか、その理由を書かねばならまい。

4年前、長い髪で胸をかくしているタレントの写真を見た。美しいと思った。

終了。

自分がそうなる姿を想像して一心に髪をのばしきっていたのである。

果たして。4年後、つい先だって、ユウコの髪が肩にも届かなくなったのは、むなしい追いかけっこが原因だったという。

顎と乳首を線で結ぶ。昔は確実に正三角形であった。

しかし悲しいかな、年齢とともに底辺の位置はさがり、両辺が長い二等辺三角形になっていく。以降、てっぺんの角度は鋭くなるばかりなのである。例にもれず妙齢のユウコもその移り際を如実に実感したのだった。

髪がのびても、追いかける対象はどんどん下がっていく。

ある日、解けなかった方程式が解決されない理由を突然悟ったかのごとく、ばっさりとユウコは髪を切ったのである。

ところが。

実はユウコは目的を達成していたのである。美しいかはどうあれ、絶妙に胸を隠した自分の毛先を見て、その足で(いや正確には美容院に予約を入れて、服を着て)髪を切った。

なぜユウコが嘘を言ったのか、ユウコ自身もわからないかもしれない。

とにかく、彼女は確実に、4年越しの夢を果たしたのである。
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