夢旅行

たとえば
エジプトもピラミッドも
その存在や言葉さえ
聞いたことない少年が
ひょんなことから
エジプト入り

当然ピラミッドに気づく

「なんだ、こいつは」

まるで
ピラミッドの第一発見者のように
深く驚き感動する

帰って兄弟に伝えると

「なんだよ、ピラミッドだろう」
「知ってるよ、お前はそんなのも知らないのか」

まったくもって相手にされない

仕方がないから少年はほおづえついて
あのピラミッドを思い浮かべてみる

実は
少年こそが誰よりもピラミッドを知っている

さすれば
こんな旅はどうだろう

ピラミッドを見に
エジプト旅行を計画する

現地に着いた途端
私の中のピラミッド情報が
さっくり失われる

リセットしに行く旅でなく
リセットされて旅する旅

まっさらな状態で見る
ピラミッド
私の目にどんな風に
映るんだろう

私の知らないとこはどこ
私の知らないことはなに

「知らない」に
思いがけなく出会う旅

どこの一番といおう
なんの一番と言おう
とにかくこの上なく
贅沢な旅

そんなことを想像しながら
見る夢も
果てしなく贅沢な夢