SSブログ

サトミの場合 [ミニ小説]

1年ぶりに彼氏に会った。
今年も元彼にはならなかったようだ。

彼女は私だけか、と聞かれると返事に困る。
私だって、彼氏だけではない。

あと6人、こんな関係の彼氏がいる。
つまり私は1年のうち7日はセックスすることになる。

そんなことはどうでもいいか。

とにかくマサルはその中でも1番長く、7年続いている。最初はもっと頻繁に会っていたかもしれない。でももう思い出せないほど年に1回の割合が続いているのだった。

「なにしてた?」
マサルは毎日会っているかのように聞く。

まるで彼氏だ。

ああ、彼氏だ。

そう軽く言い聞かせながら、朝まで過ごす。

1年に1度だからといって、決して濃厚な半日というわけではない。

そういえば他の6人も、タツヒコもヒトシもそうだ。それが長く続く秘訣なのかもしれない。

いや、そんなことを考えないのがその秘訣なのだろう。

「じゃ、また」
そう言うと、マサルはとてもうれしそうに笑う。

「またな」

そのとき初めて胸がキュウとなる。だから彼氏と思うのだ。

その次の週。ヤスヒコと会う前日だ。

マンションの前に女の子が立っていた。

「サトミさん?」
「そうですけど?」
問いかけるように答えると、突然彼女は涙目になった。

「彼と別れてください!」

彼?彼…7人の顔が頭をよぎる。

「ヤスヒコさんとは」

ああ、明日会うというメールを見たのかもしれない。

「結婚したいんです!」

私も結婚したい。

でもヤスヒコとしたいか、というと全く違ってくる。

「わかりました。もう会いません。」

あまりにも私が即答だったせいなのか、とっさに出たのだろう。
「本当ですか!ありがとうございます!」

お礼まで言われてしまった。

「さて。」

─織姫と彦星ごっこはもうやめましょう。

7回送った。7人に。

─彼氏ができたのか。
─結婚するの?おめでとう。

流れ星のように7人から返事が来た。

ただ、マサルだけは様子が違ったようだ。

─うん、やめよう。今週末、会おう。

私はマサルのメールにだけ、返信する。

─うん、じゃあまた。今週末ね。

すぐに私の携帯が反応する。

マサルが、うれしそうに笑いながら返信をくれたのだろう。
nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:テレビ

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。