モノクローム・フィーリング [キーワード]
モデルの菊池亜希子さんが主演をつとめる「森崎書店の日々」という映画で思い出した。
映画は神保町の設定だが、思い出したのは茅場町に息づく「森岡書店」。正直、「森」と「本屋」という共通点だけである。
ただし、ここも、映画に出てきそうな、映画の舞台といってもぴったりくる場所だ。
今、潮田登久子写真展「Biblioteca-本の風景」が開催されている。
国会図書館、早稲田大学の書庫で撮影された難解そうな本から、学校で見つけたという我々もなじみ深い辞典などその本の風景をモノクロームで表現している。
当然ながら本は、誰かが動かさない限りまんじりともせずその場に佇んでいるだけだが、写真の中の本たちは動いているあいだのここぞという一瞬をとらえたような生命力がある。
運よく潮田さんご自身がいらっしゃったので、少しお話することができた。
失礼ながら私の母親とそう変わらないお年のご婦人だが、話した感じは品よくやわらかく、ただ作品の前に立っているお姿は、一つのことをやり遂げている余裕と次へ続く意欲に満ち溢れていた。
1階下のGallery Suchiでは小山航平写真展「白夜夜行」が催されていた。
こちらも一貫としてモノクローム。CGなのかリアルなのか執拗に眺めていた私だが、途中から、いい意味でどうでもよくなり、この写真を夜思い浮かべるとよく眠れそうな気がした。
人は現実から超越したものを想うと、よく眠れるらしいのだ。
夢の中で現実に感じられるといい。
普段、色づいた風景を見ているが、本当はすべてモノクロームで、浮き上がる色は自分の勝手な想像なのかもしれないと思った。
そして、眠くなった。
思いがけず、いい睡眠材料を得たものだ。
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